島田紳助氏引退

 
 島田紳助氏が引退を表明した。
 
 氏が所属する吉本興業によると、「平成17年6月ごろから2年間に渡って、暴力団体関係者と親密さを伺わせる携帯メールのやり取りが確認された」のがきっかけだという。引退は紳助氏自身が表明したらしい。

 記者会見で紳助氏は、引退という決断をした理由について、「自分がセーフだと思っていたことが、この業界のルールではアウトだった、ということを理解した。業界のルールに反したまま芸人として活動していくことは自分の美学に反するし、後輩にも示しが付かない。だから引退という道を選んだ」という主旨のことを述べていた。

 この件の裏に、世間には知らされていない事情が潜んでいるのかどうかは分からない。「紳助はとんでもない悪事をはたらいていた。揉み消された真相が別にある。本当は紳助は解雇されたのだ」という主張に、反証を与えることはできない。
 
 ただ、僕個人は、過去にTVで拝見してきた紳助氏の言動から窺える印象として、「この方は確固たる人生哲学を持っていそうな方だなぁ」と常々感じていたので、今回の件において、「紳助氏が自身の美学を貫くために引退の道を選んだ」という点については、あながち間違いではないのではないか、と思っている。あくまで僕の予想であり、真相は分からないが。
 

 今回の件での騒ぎや、色々な所で沸き起こる陰謀論を見るにつけ、「世の中のどんなことでも、物事には公にされない裏事情があるもの。そういう見方ができない人はリテラシーが低い」という風潮が少なからず世間に存在しているように感じる。それはすごく嘆かわしいことだと思う。「入ってくる情報を何でもバカ正直に間に受ける」ことは愚かだとは思うが、「何でもうがった見方をすればいい」という発想も結局は思考停止に過ぎず、同じ点で愚かだと思う。
 『大物芸人なんて皆ヤクザとグルになって裏で悪いことをやっている』、『政治家なんてみんな裏で汚いことをやっている』などと、確固たる情報源があるわけでもなく、体験として自分の身で実感したわけでもないことに対して、それこそ世間の風潮をそのまま「バカ正直に真に受けて」、世の中の裏事情を悟った高尚な人間になったつもりなのだから、愚かとしか言いようがない。
 
 
 紳助氏についての話からそれてしまったが、僕は氏のことが好きかどうかと言われると正直あまり好きではないので、別に「紳助さんカムバーック!」とか思っているわけではない。しかしそれでも、あの広大な「教養の守備範囲」と笑いのセンスから繰り出される軽妙な語り口がもう聞けなくなるのは、少し残念である。


 ていうか、氏が司会してたレギュラー番組はほんとどうするんだろうね。「紳助ファミリー」と揶揄されていたヘキサゴンレギュラーのタレントとかって、ナワバリ争いに負けたライオンの子供達が勝ったライオンに噛み殺されるように、紳助氏以外の大物芸人派閥から今後ないがしろにされて、干されていったりするのかな。
 

 と、危うくさっき自分が批判したことに該当するような発想を繰り広げかけてしまった所で今日の日記を閉じます。